子育て(得)情報

「あおもり子育てネット」の過去記事を再編集して掲載しています。

ノロウイルスに気をつけよう

 暑い季節も過ぎ、日に日に秋らしくなってきました。体に貯まった“夏の疲れ”も、さわやかな気候とともにだいぶ和らいできたのではないでしょうか。
 今年の夏は、インフルエンザ(季節はずれ!?)が流行っていましたし、蜂に刺される被害も例年になく多かったようです。また、虫刺されでも異常に腫れて病院に通う人も多かったようですね。
 みなさんのご家庭ではいかがでしたでしょうか?

 本格的な冬に向かうこれからの季節に、近年増加傾向にある“胃腸炎”をご存じでしょうか?そうです「ノロウイルスによる感染性胃腸炎」なんです。「ノロウイルス」に感染すると、特に高齢者や、幼児は重症化しやすいとのことです。
 これからの季節も“ノロウイルス”などに注意して、家族が健康で過ごせるように気をつけたいですね!
看護師
■ノロウイルスとは?
 ノロウイルスは電子顕微鏡でしか見えない、ごく小さい球形のウイルスです。以前から存在していたと考えられますが、ウイルスの性質が明らかになったのは近年で、平成9年より新たに食中毒の原因物質に加えられるようになりました
■どうやって感染するの?
 ノロウイルスに汚染されたカキ(二枚貝)などの食品を、生あるいは十分に加熱調理しないで食べた場合に感染すると考えられます。
 またノロウイルスは人の腸内で増殖し、ごく少量のウイルスで感染する性質がありますので、感染者・患者などの大量にウイルスが含まれた便や吐ぶつなどから人の手や水などを介して感染が広がります。
それ以外にも氷、果物、刺身やサラダなどの加熱されていないさまざまな食品での感染が生じており、人から人への感染も報告されています。

ハンドソープ
■ノロウイルスの感染の特徴
  • 少量で感染し(10~100個の接種)発症率が高い。
  • 主に食品を通じて感染するが、人から人へも感染する。
  • 感染者がすべて発症するわけではない。
  • 食品で増殖するわけではないので食品の鮮度に関係なく感染する。
  • 何回でも感染する。
■主な感染源
  • カキなどの二枚貝(他にアサリ、ハマグリ、シジミ、ムール貝など)
  • 手に付いた患者の便(配膳直前に触れたものを介して)〈きれいに洗ったつもりでも、ウイルスは残っていることがあるんですね〉
  • 非加熱食品(ウイルスに汚染された水・調理具を介して汚染)
  • 患者が吐いたもの
■感染するとどうなるの?
ノロウイルスの潜伏期間は、24~48時間です。主な症状は吐き気、嘔吐、下痢(水様便)、腹痛で、発熱は軽度のようです。他に頭痛、上気道炎など、風邪に似た症状もあるようです。 
これらの症状はおおよそ1~3日で収まりますが、便には2週間ほどの間ウイルスが含まれていますので、感染者は手洗いや入浴の際に十分な洗浄が必要です。また家族など身近な人も十分清潔を心がけたいですね。
現在、ノロウイルスに効果のある抗ウイルス薬はありません。免疫力の弱い乳幼児や高齢者は症状が重くなることもあり、脱水症状を起こしたり、体力を消耗したりしないように、水分と栄養の補給を充分に行いましょう。
■ノロウイルスを予防するには
ノロウイルスは十分に加熱することで滅菌できます。ですからカキなどを生食するときは必ず「生食用」にし、それ以外は食品の中央まで火を通して食べましょう。
調理の前には十分に手を洗い、カキなどを調理した後の調理具は洗浄・殺菌(85℃以上の湯で1分以上加熱するか、塩素系漂白剤による殺菌が効果的)をしましょう。

ハンドソープ
■家庭ではこんなことに気をつけましょう!
  • 手はこまめに洗う
    カキなどを扱った際には石鹸などで十分に手を洗いましょう。もちろんトイレの後や赤ちゃんのオムツを扱った際にも十分な手洗いと消毒を!
  • 調理器具をわける、十分に洗浄する
    魚介類などを扱った調理器具と、生のまま食べる野菜などとでは、調理器具をわけるか十分に洗浄するようにしましょう。
  • 生ものの取り扱いは慎重にする
    例えば、生ものをザルに入れて水洗いした場合、水切りをしたときに周囲の調理器具や水道の蛇口にはねが飛ぶ可能性があります。ノロウイルスに限らず、そのようなことから食中毒が発生することがあります。
  • フキンは十分に消毒を
    お手拭きや食器拭きに使用したフキンは洗剤で洗うだけでなく、熱湯や塩素系漂白剤で消毒をし、日光に当てるか乾燥機で十分に乾燥させて使用するようにしましょう。
    ※十分な洗浄後、次亜塩素酸ナトリウム(塩素系漂白剤:塩素濃度200ppm)で浸すように拭くことでウイルスを殺せます。
ウイルス対お薬
ノロウイルス食中毒の発生件数は11月くらいから増加し、1~2月がピークになることが多いそうです。同じくこの時期は他にもインフルエンザなどの様々な感染症が発生します。
上記の“家庭ではこんなことに気をつけましょう!”を励行してウイルスに負けないようにしたいですね!
青森県内(地域別)の感染症発生情報が詳しく公開されています。
青森県感染症情報ネット
このページは厚生労働省の情報をもとに作成しています。
  • -
  • -

発達障害をみんなで考えよう

 “発達障害”といっても、それはとても広く深いもので簡単に理解できるものではないでしょう。
 “学習障害(LD)”、“注意欠陥・多動性障害(AD/HD)”、“高機能自閉症”、“アスペルガー症候群”等々。
 時には専門家でさえ診断名を変更することや、追加することもあるようです。しかしそれが“発達障害”の特徴の一つなのかもしれません。
 それぐらい症状も実に様々で、月齢や年齢、生活環境、周囲の対応などによってもかなり変化していくようです。

 本来、たいていの子どもは“自分本位”で“お話好き”で“少々乱暴”で“行動的”。“突発的”で“泣き虫”で“ごんぼほり”で・・・。時にはそんな行動が親御さんをはじめ子どもに関わる人達に“ちょっと困った行動”と思われるかもしれませんが、またそこが“子どもらしさ”として認められるところでもあると思います。
 しかし『お話が止まらない』『強すぎるこだわり』『乱暴すぎる』『行動が衝動的』『突発的すぎる』というような、『~すぎる行動』が頻繁に出る場合、やはり“ちょっと困った行動”や“子どもらしさ”、“まだ小さいから”と簡単にやり過ごすことは難しいようです。

 子どもと接していて、『関わりにくい』、『行動が(時々)奇妙』、『伝えたいことが伝わらない・伝わりにくい』、『想定外の行動が頻繁』、『ケガが多い』、『偏食が多い』等々、実際に子どもと生活して「ちょっと変だなぁ・・・」と感じたり、それらの行動によって養育者自身が過度のストレスを感じているときなど、何か私たち自身にできることはないでしょうか?
 そして何よりも子ども自身が“生きづらさ”を感じているのなら、私たちは“昨日と違う何か”を知ることも必要になるのかもしれません。

罫線(車)

ロゴ(わどなど)ロゴ(ハッピー☆子育て支援ブック)
 この支援ブックは、弘前大学教育学部松本敏治教授のもと、学生さん達が手がけたものです。
 障害の理解、支援制度、医療、就学・特別支援教育、就労などなど知りたいことがわかりやすくまとめられています。また県内の情報もたくさん載っていますので、とてもお役立ちの一冊です。

■「わどなど」 はじめに(抜粋)
 こんにちは。私たちは弘前大学教育学部学生です。LD(学習障害)やAD/HD(注意欠陥/多動性障害)、広汎性発達障害などの言葉を様々なメディアで目にするようになって久しい昨今。( 中略 )近年は特別なケアの必要なお子さんの存在が教育現場やご家庭においてクローズアップされています。
 しかし、このようなお子さんに対してまだまだ多くの誤解があることも事実です。私たち学生は、ボランティア活動や教育実習を通して、誤解や様々な困難に立ち向かい、日々奮闘されている保護者の方々を目の当たりにしてきました。その中には育児に不安を抱えられるお父さん・お母さんも少なくありません。
この冊子では、LDやAD/HD、広汎性発達障害についての基本的な知識に触れ、青森県の教育・医療、情報を紹介しています。また、より充実した育児のために福祉制度などの公的支援を含めた情報もあわせて紹介しています。お子さんと一緒に楽しみながら活動できるようなミニコラムもあります。
 まだ見ぬお子さんを迎えるにあたって、またお子さんとこれからを共に歩むにあたって、この冊子を活用していただけたら幸いです。

☆「わどなど」の名前の由来☆
 「わどなど」という冊子名には、「わ(わたし)」と「な(あなた)」が共に歩んでいくという意味が込められています。この冊子が未来へ向かって進んでいくための一つの手がかりとなることを願っています。
☆この本の購入に関するお問い合わせ先☆
弘前大学生活協同組合 会館店
TEL 0172-33-3742
FAX 0172-33-8973
URL http://www.coop.hirosaki-u.ac.jp/
Email b-shop@coop.hirosaki-u/ac.jp



ロゴ(ステップ)ロゴ(青森県発達障害者支援センター)
 平成17年4月の発達障害者支援法の制定後、12月、青森市に発達障害者支援センター「ステップ」がオープンしました。
 ステップには社会福祉士や臨床心理士などの専門職員がおり、相談や専門的な発達検査や、発達支援などを行っています。

ステップの機能


アイコン(?)ステップの方に色々と聞いてみました!
  • 開設以来どれくらいの方が利用されていますか?

  •  相談は月に、40~50件くらいあります。乳幼児、小・中学校の普通学級に通う子どもの親御さんや、障害の為にコミュニケーションが苦手で、就職してもなかなか続けられないなどの大人からの相談もあります。

  • 相談したい時はどうすればいいですか?

  •  まずはお電話をくださいね。そしてゆっくりとお話を聞かせてくださいね。
     ここは「発達障害支援センター」です。でもあなたや、あなたのお子さんを“障害”という言葉でくくったりするところではありません。このセンターに来たから「障害児になっちゃう」とか「まわりに知れ渡ってしまう」とか思わずに来てくださいね。
     それに、“匿名”でも相談を受付られるので、一回きり「こんなとこ、どうしたら良いのでしょう?」ということでも大丈夫です。

  • 具体的に発達障害だと診断は受けていないけれど、「うちの子何となく変わってる・・。どんなふうに接していいかわからない時もあって・・。」という風に感じているお母さんも多いようですが・・。

  •  3才位までになんか・・・?と感じるお母さんが多いようです。
     生き物はみんなそれぞれに違いがあります。人間もみんな違った特性をもって産まれてきているんです。その特性が時には“生きづらさ”につながっている場合もありますね。
     診断が必要か否か。それはどちらとも言えないと思います。「焦らなくてもいい」とも思います。でも診断を受けたことで、「すっ」としたというお母さんも多いです。「ああ、そうだったんだ。この子の生きづらさの原因はこれだったんだ。」って。
     大きくなってくると、変化してくるところも出てくるし、また変わらないところはそれとしてまわりが受け入れるようにしてあげて、お子さんが生きやすくなっていけばいいなあって思うんです。
     「この子はこんな特性があるから、こんなときにはこんな風に対応してみたらどうでしょう。」とか、「こんな感じに対応してみたら、こんなところが変わってくるかもしれませんよ。」とか。一緒に考えてやっていきたいですね。

  • 家庭に(診断があるなしに関わらず)自閉傾向の子どもがいる時の、家族の関わりはどうでしょうか? こんな事を聞いたことがあります。
     「この子はとても波があり、手に負えない状況になることもしばしばです。兄弟とくらべても育てにくさを強く感じています。子どもと一番長くいるのは母親である私です。ですから子どもとの時間が少ない夫や祖父母には、子どもの腑に落ちない行動を理解してもらえません。『まだ○才なんだから・・』 『大きくなれば直るから・・』 『男の子だから・・』というふうに。そして極めつけは『おまえの育て方が悪い!』と言われます。」

  •  家族の子どもへの理解が変わらないと、お母さん(子どもと一番長く時間を過ごしている家族)が大変ですよね。
     あるお子さんについての面接の何度目かに、お父さんも同席してくれたことがありました。やはりそのお父さんも、自分の子どもの『腑に落ちない行動』の数々を『障害の一端』とは受け入れにくかったようです。お忙しい中を同席してくれたことに本当に感謝しました。男の人はとても変化が大きいんです。ですから、子どもへのお父さんの理解が深まってくると、お母さんを支えてくれるようになります。するとお母さんのストレスがグッと減って、本当に楽になって子どもへの対応もスムーズに進められる様になっていくんです。
     お母さんの身近な相談役として力を貸してください。とにかくお母さんを支えて欲しいと思います。母親は子どものちょっとした仕草で一喜一憂するんです。子どもを毎日見ているからこそ不安になるんです。

  • 発達障害を持っていたり、その傾向がある子どもがいる時、やはりその子や家族のまわりにどれだけ理解者がいるかということが、子どもにとっての「生きやすさ」に繋がるのかもしれませんね。

  •  子どもから離れて、お母さんや家族の方の話を聞くということも、大切なことと思っています。そういうことからも、お母さん同士のつながりってとても大切だなと感じています。
     ステップでは「親の集い」を開いています。子どものことや発達障害のこと、また母親自身のことなどについて、家族の中で理解が得られれば本当にハッピーなんですけどね。なかなか難しい壁、うまくいかない場合もあるんです。ですから家族以外にも、理解者を得ることも良いことだと思います。まだ回数こそ重ねていませんが、小学生の親中心でお互いの悩みを共有したりしています。
     また青森市内には「障害を持つ子どもの親父の会」を作ろうという話があります。お父さん同士もちょっとビールでも飲みながら情報交換したり、色々な気持ちを共有しあったりしていければいいなと思っています。お父さんがしっかり理解しているところは、お母さんも強い。前向きに行動しているところが多いように感じます。
    放課後児童会の先生が「『何か違うな』と感じる子が、パニックになった時などどうしてあげればいいのかわからないんです。」と言っていたことがあります。
     近頃、子どもに関わる家族以外の多くの方々にも、発達障害に関心を持っていただけるようになりました。発達障害は同じ特性をもっていても、対応の仕方も同じとは限りません。かなりの試行錯誤が必要な場合も多いです。でも「発達障害を知っていただく」、「その子ども自身を知っていただく」ということは、本当に大切なことだと思います。なかなか情報を得る機会は少ないと思いますが、ステップでも講演会など企画しておりますので、ぜひお越し下さい。

アイコン(クローバー)
■医療相談のご案内
相談日 : 毎月第三金曜日
時 間 : 午後3時~5時
場 所 : ステップ内相談室
相談員 : 芙蓉会病院 精神科 診療科長 医師 村上拓也
※相談は無料です。
※予約制になっておりますので、ご相談のある方は事前にお申し込み下さい。

■お問い合わせ先
青森県発達障害者支援センター ステップ
TEL:017-777-8201
FAX:017-735-1160
メール:aosien1@mail2.actv.ne.jp
住所:〒030-0822 青森市中央3-20-30 県民福祉プラザ 3F

 同ホームページの「みちくさ」のコーナーでは、ステップの職員の方から伺った、「気になる子へのアプローチの仕方」などを紹介しています。
 
 今回お世話になったステップの辻村所長、臨床心理士の成田さんは「診断名があっても無くても、みんなが当たり前に生きていて、幸せだなって感じられる社会にしていきたいなって思っています。」とお話されていました。
 “発達障害”に関して、このページやみちくさで紹介したことが全てではありませんが、このページを読んでくださったみなさんからも「知ろうとする」こと、「相手の立場になってみる」ことが、ほんの少しずつでも広がっていったらいいなあと思っています。
  • -
  • -

子育てメンタルヘルスについて?「何か違うこと」をする事から始めよう

バナー(弘大柴田さん)
まだ若い頃、私が勤めていた相談室を一人のお母さんと幼い子どもが突然尋ねてきました。
私が面接室の椅子に座るより早く、お母さんは次のように言いました。「うちの子どもは、『注意欠陥多動障害』です。治るでしょうか?」
 お母さんの隣りには1歳半くらいの男の子が、興味津々といった様子で私の顔や周囲のものを見ていました。その子の様子から、お母さんの言うことを信じられなかった私は、どうしてそのように思うのか尋ねました。お母さんは、「こうして座っている間でも足をばたばた動かしたり、周囲をきょろきょろ見回したりして落ち着きがないから」と言いました。なるほど、彼は足をばたばた動かしたり、周囲をきょろきょろ見回したりしています。でも、年齢を考えるとそれは当然のことのように思いました。むしろ私は、お母さんの口から『注意欠陥多動障害(ADHD)』という言葉が出たことに驚いていました。
 その当時、今で言うところの『注意欠陥/多動性障害』はあまり知られているとはいえなかったのです。そのことについてお母さんに尋ねると、落ち着きのない様子が気になり始め、さまざまな育児書を見ていてこの言葉を知り、自分の子どもがとてもそれに当てはまっているように思えたとのことでした。
 こうした話とそのときの表情から、私はこのお母さんが1年半の間体験してきた悩みや苦労がなんとなく察せられたのでした。

イラスト(ベビー服)

子どもを育てる中で、母親は様々な悩みに直面することになります。子育てに関する親グループをしている上村(2004)は、グループの中で語られる子育ての悩みを3種類に分類しています。
 その一つは「孤独感」です。出産を機に、女性は対人関係の大きな変化を強いられることになります。仕事を休み、育児に専念することもあれば、これまでのやってきた仕事をやめる必要が出てきたりします。そして、子どもを持つ同じ母親との子どもを介したつながりが多くなってきます。
 こうした母親同士のつながりについて彼女は、不安や不満など弱みを見せたり本音を言い合ったりするような関係にはすぐなれないものだと述べています。どうやらお互いにだめな母親とは思われたくないという競争心にも似た気持ちが働き、関係がギクシャクしてしまうようです。
 二つ目は「心理的拘束感」です。彼女によると、母親たちは「いつも子どものことを第一に考え、子どもとともに楽しむことに喜びを感じる」といった「平凡な人間には到底できそうもないこと」を感じ、縛られているといいます。そのためか、「皆さんがしてみて有効な息抜きを教えてください」と話を向けると、参加者の表情が見る見る和らいでいくそうです。
 三つ目は「適切な評価といたわりの欠如」です。子育てと言うのはできて当たり前だと思われています。そのため、周りから評価されることはほとんどないのかもしれません。彼女は、グループの中の大半の母親は自信の持てなさや低い自己評価について語ると述べています。また、虐待をする親は虐待をしない親よりも自尊感情が低いと言う子ども虐待防止センターによる調査結果もあるくらいです。
 こうして見てみると子育てにはさまざまな「あるべき」「すべき」があるといえるのかもしれません。母親とはいつも子どものことを第一に考えるべき、子育てはできて当たり前なのだから、誰でもきちんとやるべきなどなど。

 こうした多くの「あるべき」「すべき」の中で有名なものに「三歳児神話」があります。これは、子どもは三才までは家庭で母親の手で正しく育てないと、後々取り返しのつかない恐ろしいことが起きるという考え方です。
 また、同様に有名なものに「母性神話」という言葉もあります。これは、子どもを産めば、自動的に母性がわいてきて、自然に子どもの世話をしたくなるものなのだという考え方です。ここで言う
「神話」とは、根拠がないにもかかわらずほとんどの人が信じてしまっているさまざまな社会的な思い込みのことを言います。これら二つは実際には根拠のないものなのですが、いまだに多くの母親の心を縛っているといえるでしょう。
 これ以外の「あるべき」「すべき」の多くも神話であるといえます。
 例えば、「子どもとの一体感」に関して言えば、母親よりも父親のほうが強い、しかも育児にほとんど関与しない父親ほど子どもは自分の分身であるという気持ちが強くなっていることが見出されています(柏木・若松,1994)。
 さらに、母親に育児役割が偏っている場合、母親の父親や結婚に対する態度は拒否的となる(平山,1999)が、二人とも職業を継続してきた共働きの夫婦の場合高い結婚満足度を維持できる(柏木ら,1996)という調査結果すらあるのです。

 このような「あるべき」「すべき」という言葉がいかに、母親をそして子育て支援にかかわる専門家を縛ってきたのかを改めて考える必要がありそうです。
 始めに紹介したお母さんも、こうした「あるべき」「すべき」に図らずも縛られていた一人でした。
 彼はお母さんにとって初めての子どもで、お父さんは転勤族であり出張しがちという状況でした。その中で、お母さんは妻として夫の留守を守り、母親として子育てをたった一人で頑張っていたのでした頼りになるのは市販されている育児書だけという生活の中で、子どもの落ち着きのなさに気づき不安を高めていったことがその後の面接の中で明らかになりました。
 子どものちょっとした行動の変化に母親が不安になり、それが子どもの行動に影響し、それによってさらに子どもの行動が変化してしまう、これを心理学者のザメロフは「発達的悪循環」と呼んでいます。まさに、このお母さんはこうした「発達的悪循環」の渦の中に巻き込まれていたと考えられました。
 これは、決して特別なことではありません。ある一定の条件がそろえば、どんな母親と子どもの間にも起こることなのです。「発達的悪循環」に陥ってしまう原因の一つに「あるべき」「すべき」があることは明らかです。

 この「発達的悪循環」から逃れるために我々はどんなことができるでしょうか。「あるべき」「すべき」という考え方をしないこと、これが一番思いつきそうなことです。
 しかし、実際にはこうした自分の思い込みを変えることはとても難しいことです。なぜならば、思い込みを変えようとするためには、まず始めにその思い込みについて考えなければならないからです。これは、「『キリン』のことなんか絶対に考えないでください」と言われているのと同じです。どうですか?この一言を読んで一番初めにイメージしたのはキリンのことではなかったでしょうか。
 「あるべき」「すべき」という考え方をなくそうとは思わず、自分の中にあるのだということを知るだけにとどめておくだけでも楽になることができると思います。
 外に眼を向けること、これも大事なことといえるでしょう。しかし、これも実際には難しいことといえるかもしれません。なぜならば、これはとても大きな一歩だからです。はじめに紹介したお母さんも子どもをどこかに預け、子育てとは関係ない友達と何かをすることを助言されたそうですが、やはりなかなか動けなかったそうです。このことも、「あるべき」「すべき」と同様に心にとどめておき、やれるときにやってみようと考えるくらいが良いのかもしれません。

イラスト(ドミノ)

 では、さしあたってできることは何でしょうか。それは、いつもと違う何かをすることなのです。どんなことでもかまいません。育児の中で毎日行っていることの中で「何か違うこと」をするのです。
 「発達的悪循環」は、定まったお互いの行動パターンの連鎖によって起こります。だから「何か違うこと」をするのはどんなことでも、行動のパターンの連鎖を断ち切ることにつながるのです。池に小石を投げるとその波紋が池の全面に広がっていくように、小さい変化は生活のさまざまなところに変化を生じさせていきます。
 ドミノ倒しの「ドミノを最初に倒す」ように「何か違うこと」してみませんか。
 先に紹介したお母さんも、「何か違うこと」をしてみました。それをきっかけに友人を作るようになっていきました。その後は、「注意欠陥多動障害」と言わなくなっていきました。
 いったいお母さんは何をしたのでしょうか。それは秘密です。それをここで書いてしまうと、皆さんの
「何か違うこと」をするのに影響が生じるかもしれないからです。


さしあたって、「何か違うこと」をすることから始めてみませんか?
  • -
  • -